toriko
人喰いの大鷲トリコ


 TGS2017セールでPS Storeで結構な数のゲームが安く買える状態です。
 Storeへのチャージもそこそこな額があったので、前からプレイしたいがどうしようかな、と悩んでいた「人喰いの大鷲トリコ」を買いました。

 上田文人氏のデザインするゲームは独特で、好き嫌いが分かれそうではあるのですが、私は「ICO」はゲーム史に残る名作のひとつだと思っているので、その雰囲気を持つ本作も是非ともプレイしたいと思ってはいたのですが、ただやはり他のゲームとのプライオリティの関係でズルズルと引っ張って来てしまっていた、という訳です。

 まぁ、発表から7年、PS4でのリリースが決定してからも発売が延期されるなど、萎える要素は他にもあり、「いずれね…」と延ばしていた、という訳でもあります。

 まだ序盤ではあるのですが、買って良かったと思える作品かなぁ? とは感じられています。

 DiRT4とNewみんゴルと並行してプレイしているため、なかなか進まないんですけれどね。



「ゲーム」として見てはいけない?

 テレビゲームとして本作を見ると、まずは「よく解らない」「何をどうすればいいの?」という感想しか出てこなくなるかもしれません。
 次に「あぁ、このパズルを解いて先に行けばいいのね?」という事が理解でき、その通りに先に進む感じになります。

 ただ、この見方は、本作…というか、ICOもそうなんですが、本作には当てはまらない気がするのです。

 これは最早、ゲームではない。
 インタラクティブに楽しむ映像エンタテインメントだ、と思う訳です。

 まだ序盤で、恐らくは全体の1/3くらいしか進んでいない状態ではあるのですが、既に「少年」と「トリコ」という不思議で巨大な怪物との心温まる交流にメロメロにされている次第です。

 少年は何処から来て、ここは何処なのか。名前は何なのか。そもそも名前があるのか。
 鷲の爪と翼と嘴を持つ角のある巨大な犬のような怪物「トリコ」は何なのか。
 そんな事が全く解らない状態で、プレイヤーの分身である「少年」が、鎖に繋がれ傷ついた「トリコ」の前で意識を取り戻すところから物語が開始されます。

 最初は「少年」に対して野性の怒りを露わにしていた「トリコ」ですが、「少年」が餌となる青白く光る物質の入った樽をくれ、自分を愛しんでくれる存在だと気づくと、今度は「少年」の力になろうとします。
 とはいえ、「トリコ」は何かに操られてもいるようですし、ある紋章には恐怖を感じて足がすくんでしまうという状態でもあります。

 そんな不自由な「トリコ」を助ける「少年」。その「少年」を助けよう守ろうとする「トリコ」。
 彼らは自然と互いを必要とし、助け合いながら「大鷲の巣」を上へと登り続けることになります。

 その過程を見ていると、心から優しい気持ちになっていく不思議な感覚に陥ります。


ゲームではないと感じる理由

 少年を操るだけではなく、少年がトリコを操るように少年を操作する、ということもゲームのうちになります。
 ただ、これが必ずスンナリとトリコを操れる訳ではないので、様々な試行錯誤をし、謎を解き、巨体のトリコが先に進めるよう環境を整えていくことが、取り敢えずのゲームとしての操作になるのですが、トリコは言うことをスンナリきかない、少年では勝てない敵がいる、トリコに餌を与える必要もある…等が一応は「ゲームとしてプレイヤーに与えられるストレス」で、このストレスを解消してトリコと意思疎通が出来て先に進むことが「ゲームとしてプレイヤーに与えられるストレスからの解放」になります。

 ただ、そのような小うるさい事を考えなくて、ひたすらにトリコに対して気遣い、トリコをなだめ、トリコを愛しんでいくことが、プレイヤーがすることになるのですから、自然と少年の気持ちにプレイヤーが近づいていくことが出来ます。
 これが、ゲームではなく、インタラクティブな映像作品だと感じる所以です。


優しくなれない大人にも、他者を思いやる気持ちを持たせたい子供にも

 この「人喰いの大鷲トリコ」は、心が荒んだり、なかなか他者に優しくなれないで悩んだりしている大人や、他者を思いやる、他者と助け合うという気持ちを持ってほしい子供に、ぜひプレイして欲しい作品かなー、というのが第一印象です。

 なかなかスンナリと言う事をきかないトリコではありますが、それでも少年を助けるため必死になりますし、時には可愛らしい一面も見せますし、時には恐ろしい一面も見せます。
 言う事をきかないから可愛くない、憎らしい、という単純な思考ではなく、言う事をなかなかきかないのならば、互いに歩み寄ろう、互いに理解し合おうとする優しさを持てば、相手も心を開いて応えてくれることを感じられる。そんな展開になっています。

 ゲームとしてドハマリしてクリアしよう、って感じではなくて、気軽に「トリコをなでなでしてくるか」くらいの感覚で起動しても良い作品かなー、と思いました。


ただ、惜しむらくは…

 非常に良い作品ですし、映像的な完成度も相当に高いのですが、ただ、トロフィー獲得条件を見てしまうと萎えます。
 「おっと、つまりはタイムアタッククリアしろってことかい?」ってことになってしまうので。

 なので、トロフィーなんて気にせずに世界観を堪能するほうが、この作品の良いところをたっぷりと味わえるでしょうね。

 私はもともと、トロフィーはあまり気にせずにプレイするタイプなので大丈夫なんですが、トロフィー獲得もプレイ目的だって方にはオススメはしません。そんな遊び方するくらいなら、この作品じゃなく、他のゲームをプレイするほうが絶対にいいでしょうから。

 トロフィー獲得のためのタイムアタックは、ある意味この作品への冒涜かなぁ、くらいに感じてしまいました。これが現時点での唯一の不満点ですかね。